2024-04-20

鹿児島大学 整形外科学教室

Department of Orthopaedic Surgery Kagoshima University

手・肘グループ

年間手術件数(R4.1~R4.12):10件

『手外科グループ』

手外科グループは主に佐々木が担当しています。

一般的な手外科疾患(ばね指・母指CM関節症・手根管症候群・肘部管症候群・手指の骨折など)の手術も行っていますが、下記のような臨床試験にも取り組んでいます。

『更年期の手の症状に対する治療について-当院婦人科との共同臨床研究-』

関節軟骨・筋肉・腱にはエストロゲンレセプターが存在し、エストロゲンはその機能を維持する働きがあります。更年期女性ではエストロゲンの低下により約40%で手の関節痛やこわばりなどが出現することが知られています。しかし、これらの更年期の手の症状に対する根本的な治療については確立していないのが現状です。これまで、へバーデン結節やブシャール結節や母指CM関節症、狭窄性腱鞘炎(ドケルバン病やばね指)、手根管症候群などは、それぞれ別の疾患として治療されてきましたが、更年期におけるエストロゲン低下に伴う関節や腱の炎症と考えると、更年期障害の症状の一つととらえることができます。

当科では、これら更年期の手の症状を含む更年期障害の症状のある患者さんに対して、当院婦人科と共同で治療を行っています。更年期障害の治療は、低下した女性ホルモンを補充するホルモン補充療法や、漢方治療やサプリによる治療など様々なものがあり、患者さんの症状や希望に合わせて選択します。ホルモン補充療法は、関節痛や筋肉痛などに効果があることが報告されていますし、変形性手指関節症(ヘバーデン結節、ブシャール結節、CM関節症)に対しては変形の進行抑制効果があることが報告されています。日本人の平均閉経年齢は51~2歳とされていますが、早い人では40代から手のこわばりや手の痛みが出現することがあり、関節の変形や腱の炎症がひどくなる前に治療を開始することが重要であると考えています。

40代以降の女性で、手のこわばり、手の関節の痛み、手のしびれなどでお困りの患者さんがいらっしゃいましたら、ぜひ整形外科外来099-275-5840にお問い合わせください。


ヒトにとって手は非常に重要な役割を担っています。
手外科グループで扱う疾患は
ばね指や手根管症候群、肘部管症候群、へバーデン結節、母指CM関節症など上肢に発生する障害が中心で、
その種類は多岐にわたります。
また、橈骨遠位端骨折や舟状骨骨折、手指の骨折などの外傷も含みます。

【ばね指】

ばね指は指の付け根が痛くなり、指の曲げ伸ばしの際に疼痛が出現します。指を曲げる腱と腱鞘というトンネルの間で炎症が起こり、疼痛が引きおこされます。

また、症状が進むと指の引っかかり感、曲がったまま延ばせなくなる、延ばそうとするとパチンという音とともにのばせるようになる弾発現象が起こります。これを放っておくと指の腱が癒着し、指が完全に伸ばせなくなります。

痛みに対しては腱鞘内注射が効果的です。弾発現象が起こると注射だけでは改善しないので手術が必要になります。

日本手外科学会手外科シリーズ:ばね指

http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/3bane_2.pdf

【手根管症候群】

手根管症候群は、手首を通る正中神経が神経の通り道で圧迫されることで手指(親指から薬指の親指側まで)のしびれ痛みを引き起こします。ひどくなると親指の付け根の筋肉がやせてきて細かい作業をすることが難しくなります。手指のしびれ痛みは朝方に強くなり、手を振ると良くなるのが特徴です。治療は、神経の圧迫の程度にもよりますが、注射をしたり、場合によっては手術を行うこともあります。

日本手外科学会手外科シリーズ:手根管症候群

http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/1shukon_2.pdf

【肘部管症候群】

肘部管症候群は、肘を通る尺骨神経が神経の通り道で圧迫されることで、手指(薬指から小指)のしびれや痛みを引き起こします。ひどくなると指の筋肉が萎縮し、独特な指の変形である鷲手変形を来し細かい作業をすることが難しくなります。子供のころの肘の怪我などに続発して起こることがあります。保存療法では改善が得られないことが多いため手術を行うことが多いです。

日本手外科学会手外科シリーズ:肘部管症候群

http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/8hiji_2.pdf

【へバーデン結節】

指の第1関節(DIP関節)が腫れたり、痛くなり手を強く握ることが難しくなります。一般的に40代以上の女性に多く発生する変形性関節症です。近年更年期障害の一種としてとらえられることが多いのですが、治療法は確立していません。

日本手外科学会手外科シリーズ:へバーデン結節

http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/4heba-den.pdf

【母指CM関節症】

親指の付け根の関節の変形により、ものをつまんだり蓋を開けたりするときに痛みが出ます。変形が進行すると親指が十分開けなくなり、ものをつかんだりすることが難しくなります。まずは装具療法や関節内注射で経過を見ます。それでも疼痛が改善しない場合や日常生活に困難がある場合は手術を行います。

日本手外科学会手外科シリーズ:母指CM関節症

http://www.jssh.or.jp/ippan/sikkan/pdf/15boshi-cm.pdf