2024-04-19

鹿児島大学 整形外科学教室

Department of Orthopaedic Surgery Kagoshima University

腫瘍グループ

年間手術件数(R4.1~R4.12):149件

骨軟部腫瘍グループは、保健学科 永野教授、佐々木講師、篠原助教、島ノ江医師が担当しております。良性骨腫瘍(骨にできた良性の腫瘍)、良性軟部腫瘍(筋肉、神経、脂肪などにできた良性の腫瘍)、悪性骨腫瘍 (骨にできた悪性の腫瘍)、悪性軟部腫瘍(筋肉、神経、脂肪などにできた悪性の腫瘍)を中心に診療を行っております。悪性骨軟部腫瘍の場合、手術はもちろんですが全身化学療法が必要になることもあり、当科にて行っています。また、悪性骨軟部腫瘍患者さんの場合は、早期から緩和ケアチームと合同で治療に当たることで疼痛緩和や精神的サポートも行っています。治療だけでなく患者さんの希望や日常生活動作を第一に考え、診療に当たっています。また、最近増えつつある転移性骨腫瘍に対しても主科の先生と相談して積極的に手術を行っています。

【良性骨腫瘍】

手足や体の骨にできた良性の骨腫瘍で、骨にできる“がんではない”腫瘍のことです。いかに体に負担をかけずに治療をおこなうかがポイントです。

軟骨性の腫瘍

内軟骨腫 外骨腫(骨軟骨腫) 軟骨芽細胞腫

骨性の腫瘍

類骨骨腫 骨芽細胞腫

線維性の腫瘍

非骨化性線維腫(線維性骨皮質欠損)

そのほかの腫瘍

骨巨細胞腫 線維性骨異形成症 単純性骨嚢腫 動脈瘤様骨嚢腫 好酸球性肉芽腫

【良性軟部腫瘍】

筋肉、神経、脂肪などにできた良性の軟部腫瘍で、骨にできる“がんではない”腫瘍のことです。“脂肪の塊”の様なものや、老廃物の袋など多種あります。下記以外にも多くの種類があります。

線維性の腫瘍

線維腫 線維腫症

脂肪性の腫瘍

脂肪腫

筋肉性の腫瘍

平滑筋腫 横紋筋腫

神経性の腫瘍

神経鞘腫 神経線維腫

腫瘍に類似した「できもの」

ガングリオン 粉瘤(アテローム)

【悪性骨腫瘍】

手足や体の骨にできた悪性の骨腫瘍です。骨肉腫とよばれる骨そのものからできる“がん” や、胃がんや肺がんなどが骨に転移してできる“骨転移がん”があります。専門の施設で適切な治療をうけなければ命にかかわる病気です。

原発性悪性骨腫瘍

軟骨肉腫 骨肉腫 ユーイング肉腫 脊索腫 骨悪性リンパ腫 骨髄腫

続発性悪性骨腫瘍

転移性骨腫瘍

【悪性軟部腫瘍】

筋肉、神経、脂肪などにできた悪性の軟部腫瘍です。肉腫とよばれる、皮膚の下や筋肉などにできる“がん” のことです。専門の施設で適切な治療をうけなければ命にかかわる病気です。下記以外にも多くの種類があります。

線維性の腫瘍

線維肉腫 腹壁外デスモイド(良性と悪性の境界型)

脂肪性の腫瘍

脂肪肉腫

筋肉性の腫瘍

平滑筋肉腫 横紋筋肉腫

滑膜由来の腫瘍

滑膜肉腫

神経性の腫瘍

悪性神経鞘腫

その他の腫瘍

悪性線維性組織球腫(UPS) 胞状軟部肉腫など

骨軟部腫瘍の治療において最も重要なことは正確な診断と、正しい治療法の選択です。

【骨腫瘍の症状】

良性骨腫瘍の場合、無症状でレントゲン検査にてたまたま見つかることもあります。腫瘍が大きくなると痛みが出てくることがあります。痛みが出てくるということは骨が弱くなっているサインで、骨折(病的骨折)を起こしやすくなるため注意が必要です。悪性骨腫瘍の場合、正常な骨組織を壊しながら大きくなることが多いので、痛みや腫れの症状が出現することが多いです。悪性骨腫瘍の場合、比較的短期間で急速に疼痛が出現することもあるため注意が必要です。病的骨折を起こすと治療が難しくなるため疼痛がある場合はなるべく早く検査や治療を開始することが重要です。

【軟部腫瘍の症状】

症状は無痛性(痛くない)の腫瘤(こぶ)であることがほとんどです。比較的短期間で急速に大きくなるような場合は悪性軟部腫瘍が疑われますので、なるべく早期に検査や治療を開始することが重要です。

骨軟部腫瘍はまれであるためその診断は難しく、専門的な知識や経験が必要となります。診断が難しいため、MRI(磁気共鳴画像)やCT(コンピューター断層撮影)、シンチグラフィーやPET検査(ポジトロン・エミッション・トモグラフィー)など様々な画像検査を組み合わせて診断を行います。画像だけでは診断がつかないことも多く、その際は腫瘍組織を一部採取し、病理検査に提出し診断をつけることもあります(生検)。

【良性骨腫瘍の治療】

症状がなく、病的骨折の恐れがなければ定期的に検査を行い、経過観察を行うこともあります。腫瘍が大きく痛みがあるような場合には、手術を行います。手術の方法は診断により様々ですが、腫瘍をとりのぞき、腫瘍を取り除いた空隙に骨を移植し再生させる治療が一般的です。場合によってはプレートやスクリューで固定を追加して行うこともあります。移植する骨は人工骨や自家骨(自分の骨)など、診断に応じて使い分けます。

【良性軟部腫瘍の治療】

一般的には腫瘍切除を行いますが、腫瘍ができた場所や腫瘍の種類により術後神経脱落症状(しびれや麻痺)の出現が危惧される場合には定期的に検査を行い、経過観察を行うこともあります。

【悪性骨腫瘍の治療】

悪性骨腫瘍が疑われた場合、組織の一部を採取し検査にだす生検術が必要となります。骨内から組織を採取するため、全身麻酔下での生検術が必要となることが多く、検査手術が必要となります。生検術から10日から14日間で病理診断が確定すれば、治療を開始します。治療は症例により様々ですが、手術を行う場合と手術前に抗がん剤治療を行う場合があります。手術は腫瘍が発生している骨だけでなく、骨の周りの筋組織も一緒に切除することもあります。腫瘍を切除した後は、再建術が必要となります。再建の方法は処理骨での再建や人工関節での再建等様々ありますが、腫瘍のできた場所や患者さんの年齢等を考慮して決定します。

【転移性骨腫瘍の治療】

近年、様々ながんに対する抗がん剤の改善や分子標的治療薬の登場によりその予後が改善され、転移を来しながらも長期生存が見込まれる患者さんが増えています。骨に転移を来すと、疼痛を引き起こしたり、脊椎に転移を来すと麻痺を来す可能性があります。これら疼痛や下肢麻痺は直接命にかかわることはまれですが、ADLの低下をきたすことが分かっています。ADLの低下ががん患者の生命予後を悪化させることが報告されており、転移性腫瘍患者に対し適切な治療を行い、ADLを維持することが重要であるとされています。当科ではがんの主科の先生と相談し、適切な時期に適切な方法で介入することでがん患者さんのADLを維持することを目標に治療を行っています。

【悪性軟部腫瘍の治療】

画像検査で悪性軟部腫瘍が疑われた場合、腫瘍の一部をとって検査にだす「生検」を行うことが一般的です。もし腫瘍が小さい場合には生検できないこともありますのでその際は、腫瘍をすべて切除して検査に出す「切除生検」を行います。生検術で悪性軟部腫瘍との診断が得られた場合には広範切除術を行います。広範切除術とは、腫瘍だけでなくその周りの組織(筋肉や皮下組織、皮膚など)まで一緒に切除することです。広範切除を行った後は皮膚や筋肉がなくなるため再建術が必要です。筋組織を体の他の場所から持ってきたり(筋弁術)、皮膚を移植したりして再建します。再建の方法は腫瘍ができた場所や欠損の大きさや患者さんの年齢等考慮して決定します。