患者の皆様へ
肩関節グループ
肩関節診療は谷口昇教授と上釜浩平医師、北川博之医師の三人で担当しております。初診日は月曜と水曜の午前中です。
肩関節グループは腱板断裂性肩関節症や変形性肩関節症、腱板断裂、反復性肩関節脱臼、投球障害、胸郭出口症候群などの疾患の加療を行っております。
内視鏡で対応可能な疾患に関しては関節鏡を用いて低侵襲手術を行っています。
肩関節について
肩関節は体幹(胴体)と上肢(腕)をつなぐ関節であり、上肢をうまく使うためのまさに要の関節です。肩関節は肩甲骨の小さな関節のくぼみ(関節窩)に上腕骨の先にある丸い骨頭が接する構造になっています。しばしばゴルフボールとティーに例えられます(図1)。肩甲骨の関節窩は非常に浅く、肩関節は骨の構造だけでは非常に不安定なため、周囲の軟部組織(筋肉や関節包靭帯)でその安定性を保っています。
これから代表的な肩関節の病気と当院での治療について説明いたします。
腱板断裂
肩関節を動かすために一番大きな筋力を発揮するのは外側にある三角筋ですが、その三角筋が有効に力を発揮できるよう手助けをしているのが棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋の4つの筋から構成される腱板です。この腱板が切れて、腕が上がらなくなったり痛みが出たりするのが腱板断裂です。
腱板断裂は保存療法(手術以外のお薬や注射、リハビリでの治療)で症状が改善することが多く、まず保存療法を行い、それでも痛みや動きに制限がある場合手術を行います。当院では主に関節鏡(内視鏡の一種です)を用いて、腱板の修復を行っています。具体的にはアンカーという糸付のねじを上腕骨に挿入し、その糸を切れた腱板に通し、元の骨に縫い付けるという術式です。関節鏡の一番の利点は、先に挙げた一番大きな筋力を発揮する三角筋へのダメージを小さくできる点です。
反復性肩関節脱臼
反復性肩関節脱臼とはいわゆる肩がはずれるのがクセになっている状態です。先に述べたとおり肩は非常に不安定な関節で人間の体の中で一番脱臼しやすい関節です。また不安定ということを逆にいえば非常に動きがいい関節であり、人間の体の中で一番動く関節でもあります。
肩関節には独立した構造の靭帯はなく、関節を包む膜様の構造(関節包)の一部が厚くなった構造(関節包靭帯)と筋肉が主に脱臼を防いでいます。肩関節が脱臼した場合、多くの例でこの関節包靭帯がその根元(関節唇)ごと関節窩からはがれます。当院では関節鏡を用いて、このはがれた関節唇を元の関節窩に修復しています。具体的にはやはりアンカーを用いて、剥がれた関節唇に糸を通して関節窩に縫いつけます。
変形性肩関節症
変形性関節症とはいわゆる関節の軟骨がすり減った状態です。股関節や膝関節に多く見られますが、肩関節にもおこります。
当院では主に全人工関節置換術を行っています。具体的には上腕骨の先端の丸い部分(骨頭)を金属に置き換え、肩甲骨の関節面はポリエチレンに入れ替えます。(図5)
腱板断裂性肩関節症
腱板断裂に引き続き、肩関節の変形が生じた状態で疼痛と筋力低下が生じます(図6左)。
腱板修復不可能な腱板断裂性肩関節症に対して、当院では主に逆型(リバース型)全人工肩関節置換術を行っています(図6右)。肩関節は上腕骨の先端の丸い部分(骨頭)を肩甲骨の関節面で受け止める構造ですが、逆型(リバース型)全人工肩関節置換術ではこれを逆にして、肩甲骨関節窩に丸い金属を、上腕骨側にポリエチレンの受け皿を入れる構造になります。この構造により、腱板が修復できなくても三角筋の働きで腕を挙げられるようになります。