2024-04-27

鹿児島大学 整形外科学教室

Department of Orthopaedic Surgery Kagoshima University

膝関節グループ

年間手術件数(R4.1~R4.12):86件

膝関節グループは、中村助教・中條助教・井手医師が担当しております。

変形性膝関節症

加齢・肥満・膝の外傷歴などを原因として膝の関節軟骨が摩耗消失し炎症をおこし痛みや関節に水がたまる(関節水腫)などを生じる病気です。進行すると痛みだけでなくO脚変形といわれる変形をきたします。階段の上り下りがつらい、立ち上がる時に両手の支えが必要になるなど日常生活に大きな支障をきたします。40歳以上では男性40%以上、女性では60%以上がこの病気をもっているといわれ悩んでいる方が非常に多い疾患です。

初期にはリハビリテーション(筋力増強訓練)、痛み止め、関節内にヒアルロン酸の関節内注射などを行って除痛を図ります。進行すると痛みや膝機能の著しい低下をきたし手術加療が必要なことも少なくありません。手術加療は主に骨切り術人工関節置換術があります。

 

関節温存・膝周囲骨切り術

O脚やX脚に変形し、内側あるいは外側のどちらか片側だけが傷んでいる変形性関節症に対して主に行われます。特に、膝に負荷を伴う仕事やスポーツなど、活動性の高い患者様に対して行われます。膝周囲の骨の形を変えて正常の軟骨が残っている部分に体重がかかるようにO脚やX脚の変形を矯正する手術方法です。自分の膝が残ります。70歳未満の方が適応となることが多いですが、患者様の希望や変形の進行度、活動性に応じて行っております。

 

人工膝関節置換術

関節の傷んでいる部分を取り除き金属やポリエチレンなど人工膝関節に置き換える手術です。軟骨摩耗が少なければ部分的に置換するUKAを行う場合もあります。除痛効果にすぐれこの手術を受けられる方も10年前の2倍と増加しています。当院ではナビゲーションシステムなど 専用機材をもちいて正確な手術を行い満足度や長期耐用性が獲得できるよう努力しております。

膝前十字靭帯損傷

前十字靭帯とは?:前十字靭帯は膝関節の中で、大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)をつないでいる強力な靭帯で、その役割は、主に大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)の2つがあります。 つまり、この靭帯を損傷すると、膝は前後方向および回旋方向の2つの方向に緩くなります。

原因:スポーツ外傷として頻度が高く、ジャンプ後の着地、疾走中の急激な方向転換・ストップ動作、相手との衝突などによって、膝関節に異常な回旋力が加わって損傷します。

症状:関節内に出血が起こるため、数時間で大きく腫れることが多い。損傷直後は痛みのためプレー続行不能なことが多い。歩き始めた際に膝の不安定感を感じ、時折膝崩れを起こすこともあります。

治療:前十字靭帯は関節内にある靭帯であり、血流が乏しいということもあり、自然治癒は困難であると言われています。また、これを放置すると膝の亜脱臼を起こすようになり、スポーツ活動の継続が困難になります。無理に継続すると、半月板や軟骨等を傷つけてしまい二次的な障害を起こす原因ともなります。よって、治療は靭帯再建術を行うことがほとんどです。

手術方法:前十字靭帯は、断裂した靭帯を縫合することによる安定性獲得は困難で、靭帯を再建する手術を行います。再建するために使用するものは、ハムストリングスという膝を曲げる腱か膝蓋腱です。前十字靭帯は機能的に2つの線維に分かれていると言われており、この2つの靭帯を再建する目的で、我々はハムストリングを用いた再建術を第1選択としています。膝内側に切開を加え、この腱を採取し、適切な太さ、長さに調整し、2本の移植腱を作成します。この腱を膝関節に移植して固定するわけですが、脛骨、大腿骨に2つの穴(骨孔)を作成します。この骨孔の中に移植腱を通します。移植腱の固定は、大腿骨側はエンドボタンという金属と人工靭帯の付いたもので固定し、脛骨側はステープルという金属で固定する形となります。

術後リハビリ:術後リハビリは非常に大事です。手術は成功しても、リハビリをしっかり行わないと機能的に良い膝にはなりません。術後は膝の固定を行い、徐々に可動域訓練を開始します。荷重は、4週間程度で全荷重となります。装具は3ヶ月程度装着し、筋力の回復状態などを見て、5ヶ月よりジョギング、6ヶ月よりランニング、スポーツ復帰は10ヶ月程度を目標にします。

 

半月板損傷

膝半月板損傷は比較的多いスポーツ外傷の一つです。半月板には、軟骨にかかるストレスを減らす重要な役割があるため出来る限り温存することが重要です。以前は、半月切除術が主な治療法とされていましたが、半月切除後に長期間経過観察すると程度の差はあれ、関節軟骨が傷むことから、現在では温存を目的とした治療が注目されています。半月板は膝関節の中で大腿骨と脛骨の間にあるC型をした軟骨様組織で、内側と外側にそれぞれ一つずつあります。半月板は、関節に加わる体重の負荷を分散させる役割と、関節の位置を安定にする働きをしています。

半月板が損傷すると、膝を曲げ伸ばしする際、引っかかり感が生じたり、疼痛を生じます。ヒアルロン酸やリハビリなどの保存治療を行うこともありますが、症状が改善しない場合や保存治療で改善が期待できない状態の場合は、関節鏡を使用した手術が考慮されます。

手術には半月板切除術、縫合術の2つがあります。半月板には全てに血流があるわけではなく、また血流がない部分の縫合術では癒合が難しいということもあり、最近では、自分の血液の凝血塊を断裂部に挿入して縫合するなど工夫して、できる限り半月板を温存する方法が開発されています。縫合術か切除術かは患者の年齢や半月板の状態でも変わりますので、全てが縫合できるとは限りませんので患者の状態を見て判断します。